風景印解説(平泉・中尊寺)

 はじめての風景印記事なので最初に説明を入れてます。

風景印とは

 消印の一種なのですが、地域の名所・旧跡・記念物にちなんだ図柄が入っていることが特徴です。近年は公募により決める例が多いようですが、どう決めるにせよ、図柄を決めた人の地域に対するイメージが表れたものだと思います。

 自分は持ち帰る派なんですが、消印なので、「押してもらって送る」ことができます。風景印は、1931年に日本の本土と当時の関東州でそれぞれ使用開始されましたが、特に関東庁告示では「旅行記念ノ用ニ供スル為」とされています。郵便を通じて、地域外の人間(訪問者や、手紙を受けとる人)へ地域イメージを表出していたのではないか、ということです。

 日本の自然地やレジャーの歴史に詳しい方なら、大正期に議論が進んだ国立公園制度が1931年に制定されたこともご存じでしょう。そうした時代背景の中で生まれた風景印は、やはり観光地に多い印象があります。特に北海道や中部地方ではかなり設置率が高く、関東地方や大阪府は設置率が低いです。そのわりには瀬戸内や九州ではあまり設置率が高くないので、地域性もあるのかもしれませんが。

風景印(平泉郵便局・中尊寺簡易郵便局)


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 平泉といえば、金色堂で知られる奥州藤原氏の拠点であり、源義経が最期を迎えた場所です。そんな平泉にある2つの郵便局の風景印は、いずれも前からみた金色堂(の覆堂)をモチーフにしたものです。

 「金色堂」の文字が入っているので、かなり分かりやすい風景印だと言えます。「ああ、平泉にいったんだな」と一目で分かるので、旅の土産話も盛り上がることでしょう。少し遠目から見る形にすることで文字を入れつつ、メインの覆堂はわずかに大きめにデフォルメしているのがなかなか巧みです。

 非常によく似た2つの風景印ですが、中尊寺簡易郵便局のものにはハスの花が描かれています。発掘調査で泰衡の首桶から見つかった種の発芽が成功し、中尊寺の池に植えられ咲いているものを指していると考えられます。

 中尊寺に行ったことのある人か、詳しい人でないと知らないようなモチーフなのではないでしょうか。自分もうろ覚えだったので調べ直しました。これが駅近の平泉郵便局から出てきても「よく分からない」わけですが、中尊寺の要素を少しだけ強めつつ、メインの覆堂を邪魔しない程度に抑えて描かれているので、中尊寺簡易郵便局で出す郵便の印としてはピッタリです。

 1つだけよく分からなかったのが、覆堂の右側に書かれた樹なんですよね。こんな樹あったかな…?左は境内にたくさん植わっているサワラだと思います。